名前は「愛子」
それはそれは御高齢ではありましたが、お綺麗な思わず見取れてしまう程の
美しい御夫人でした。
当時90歳を過ぎておりましたが、スラリとモデル体型と言われる姿、色白の肌に整った美しいお顔。如何にもお金持ちの大奥様、と言った雰囲気をまっとた方ですしたが、
こんな美しい女性を妻に持った男性でも浮気をするのですね。
私がこの方(分かりやすくBさんとします)Bさんと出会った頃には認知症も進み、
会話は殆ど通じない状態で、常に独り言を小さな声でブツブツと言っていました。
古くからいる職員の話では、4年前位までは入居者同士で楽しくお話したりピアノを
弾いたりしていたようでした。ある日Bさんに話しかけてみました「Bさんの
お名前は、何でしたっけ?」聞こえているのか?居ないのか?聞かれたことが 理解出来ないのか?・・・?・・・・??・
綺麗な横顔を見せてに独り言が続きます。
次の日にも同じことを繰り返し聞いてみました。
暫らく、じーーと動かずに私の声を聴いて居りましたが「・・・あ・い・・こ・」と
ポッツリつぶやくように答えた。
えぇーー?Bさんは雪子のはず・・・?・娘さんの名前?かな??
後日、娘さんのお話で・・・・・・分かりました。
娘さん「本当に母は、あ・い・こ、と言ったんですか?」
・・・・「愛子と言うのは父の愛人の名前です」
・・・・「母は長いこと父の愛人に苦しんで来ました」
と、こんな話をお聞きしました。
90を過ぎてもその恨みを忘れて居なかったんでしょうね。
美しく生まれたことが、必ずしも幸せには繋がらないという事でしょうね。
まぁ、時代背景もあると思いますが、寂しい一生を送られて事でしょう、
お気の毒としか言いようもありません。
その他にも同じような話は書ききれないほど、女性入居者の口からは聞きます。
旦那様が亡くなった後に、愛人がお金を請求に乗り込んできたとか、
子供を連れてお金を請求され、子供の養育費を払ったとか。
私の働いていた施設は有料ホーム、今と違って入居金も高額でした。
入居者は全てお金持ちの御高齢者、やはり地位とお金の有る男性は
女性で問題を起こすようです。
「浮気は男の甲斐性」なぁ~んて時代だったんでしょうね!